建設コンサルタントとは、ごく簡単に言えば『社会資本の整備や保全』に関わる調査・計画・設計等をする事業者と言えるでしょう。
「社会資本」とは
建築物以外の建造物、つまり、道路、鉄道、港湾、空港、上下水道、公園、河川関連施設や砂防施設などが該当します。
これらは「土木施設」とも言われますが、「土木」というと、どんなイメージがするでしょう?
「真夏も真冬も、野外で工事をしている」というイメージを持つ人もいるでしょう。あるいは、そこで働く人たちをイメージして「汗臭い男の仕事場」といったイメージを持つ人もいるかも知れません。
どちらかというと、泥臭いイメージがあるかと思いますが、それには、「土木」、すなわち、木と土という言葉も影響しているのかも知れません。社会資本の整備というのは、人が社会を形作って以来、延々と続いてきていることですが、日本語の「土木」は、中国の「築土構木」という言葉に由来するといわれています。コンクリートや鉄骨などがなかった時代には、文字通り、土と木(正確には石もなのですが)が、社会資本づくりの材料だったわけです。
では、日本語の「土木工学」に該当する英語は何でしょうか?。一般的には、”Civil Engineering”という言葉が、日本の「土木工学」の訳語とされています。いわゆる「市民の(ための)工学」。こちらの方が、より「社会資本」という言葉に馴染むように思います 。「泥臭い」印象を持たれることもある「土木」の担い手は、人々が便利で快適で安心して暮らせる社会づくりの担い手であるのです。
「社会資本」に求められること
さまざまな種類の社会資本があるわけですが、その社会資本には何が求められるのでしょう?
まずは、目的としている機能が確実に果たされる必要があります。その次に重要な事項として、強度と耐久性があげられます。河川上流域の大規模ダムの強度と耐久性が低かったなら、いつか崩壊して下流に大洪水をもたらすでしょう。道路のトンネルの強度と耐久性が低かったなら、いつ崩れて事故が発生するかわかりません。
それでは必要な機能が充足され、強度、耐久性も高ければ、どんなに無骨で「見てくれ」が悪くてもいいのでしょうか?建築物でもそうであるように、土木施設であっても、見た目が美しい方がいい、ということに異論はないのではないでしょうか?
私たちが、豊かで快適で安心して暮らしていくためには、機能、強度や耐久性、デザインの良さなどが備わった社会資本が必要です。
わかりやすい「社会資本」と、わかりにくい「社会資本」
「社会資本」といっても様々な種類があります。
そのなかでも、特に(上)水道・道路・鉄道などは、利用頻度も高いため「わかりやすい社会資本」といえるでしょう。
一方で、道路法面の土留の擁壁、奥山の渓流地域の砂防ダム、あるいは都内にも整備されている地下貯水池、河川蛇行部外側の護床工などは、見過ごされやすい、あるいは、存在さえ認識されていない「わかりにくい社会資本」といえるでしょう。普段、あまり役に立っていることが実感されにくいために「わかりにくい」のかも知れません。
では「わかりにくい社会資本」が真価を発揮するのはどんなときなのでしょうか?
それはズバリ、異常な自然現象の発生時といえるでしょう。上記の例でいうなら、道路法面の土留擁壁は、大雨時や強い地震動の発生時に、斜面が崩れて道路が寸断されるのを防ぎます。また、砂防ダムがなかったなら、大雨で洪水流が発生した際、土石流が発生し、下流域に住む人々の生命・財産が脅かされることもあるでしょう。
河川蛇行部外側の護床工も、大雨で川の流れが速くなったとき、浸食から護岸を守り、堤防決壊をさせにくくします。近年、都内で整備が進んでいる地下貯水池は大雨時のみに水が蓄えられ、河川の流量を減らすことで、川から水が溢れることに貢献しています。
これらのことを考えると、「わかりにくい社会資本」は、普段はあまり目立たないけれど、人命そのものや生活を、異常な自然現象から護っている「縁の下の力持ち」と言えるでしょう。
当社が関わってきた「社会資本整備」
当社はこれまで、主として河川関連施設(堤防、堰、樋管、河床整備等)や砂防施設(土止め、砂防ダム等)の計画や計画に関わる調査、そして設計等を手がけてきました。
調査、計画、設計は、施設の施工や維持管理に先立つ重要なプロセスであり、一連のインフラ整備の事業全体でのなかでも上流に位置します。
いくら優れた工法や材料があっても、上流プロセスとしての設計が悪くては、いいインフラは造れません。また、設計のための条件を決定する調査の精度が低くては、いい設計ができるはずがありません。
したがって、調査・計画・設計は、社会資本整備の成否・良否を決める重要なプロセスといえるでしょう。
また、当社が関わってきた施設の多くは「わかりにくい社会資本」であり、たとえば、公園や長大な橋梁のような華はなく、どこか地味です。しかし、人の暮らしの安全を守る施設づくりを数多く手掛けてきたことが当社の誇りです。
なお、近年では、河川関連施設・砂防施設等のみを取り扱うわけではなく、これらとセットで、道路や橋などや、遊歩道、公園整備などの景観の整備等を伴う業務も増えてきています。
こうした業務を経験することで、さまざまな分野の業務への対応力も高めてきており、守備範囲も広がってきています。今後、さらに多種多様な社会資本整備の計画・設計を高いレベルで行っていくのが当社の将来目標となっています。